第7位 ショスタコーヴィッチ

出身区分  ロシアーソビエト/現代
生年没年  1906(ペテルブルク)-1975(モスクワ)
学歴  サンクトペテルブルク音楽院
主な作品
  • 交響曲第1番(53位)
  • 交響曲第5番ニ短調(15位)
  • ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調

 

■作曲家への道のり

 ショスタコーヴィッチの人生は、ソビエトという政治体制に翻弄される厳しいものだった。ソビエト連邦が誕生したすぐ後、1926年に発表した交響曲第1番で国際的に名を知られることになるが、1936年、党機関紙「プラウダ」において、西洋的モダニズムに傾斜したとして厳しく批判された。当時、多くのモダニズムの芸術家が「非ソビエト的」として殺害される中、生命の危険を感じたショスタコーヴィッチは、交響曲第4番など多くの作品の発表を取りやめ、翌年、「内容において社会主義的、形式において民族主義」という政府の意向に沿った、交響曲第5番を発表し名誉を回復する。その後、再度の批判、そして、スターリンの死をはさみ、二重人格とも言える多面的で仮面的な傑作を多分野に残すことになる。

 

■得意な楽器

 ショスタコーヴィッチは、1927年に初めて開催されたショパンコンクールにソビエト代表として出場し、入選するほどのピアノの名手だった。本人もピアニストになるか、作曲家になるか悩んでいたらしいが、もし、ショパンコンクールで1位になっていたら、その後の彼の作品を聴くことができなかったと考えると、この結果は、運命の贈り物だったのだろう。現在でも彼の弾くピアノ協奏曲の演奏をCDで聴くことができるが、同様に大ピアニストだったバルトークのピアノ協奏曲と比較すると、作風の違いと演奏の違いがリンクして聞こえるのでとても面白い!作品同様に乾いた音色でシニカルな解釈を見せるショスタコーヴィッチに対して、バルトークは精密であると同時に実は結構ロマンティックだったりする!

 

■人間関係

 1979年にヴォルコフというソビエトの音楽学者による、「ショスタコーヴィッチの証言」という書籍が発表になり、私も日本語訳が出版されすぐに入手して読んだ。そこには、これまでの知られていたショスタコーヴィッチ像を覆すような発言が盛り込まれていた。当時、我が国では「革命」と呼ばれ、勝利の音楽と認識されていた交響曲第5番のフィナーレについて、「強制された歓喜」と発言したとされ、スターリン、プロコフィエフ、ムラヴィンスキーなどについて辛辣に語られるなど、驚きをもって迎えられたのだった。その後、この書籍は、偽書との批判も受けているが、内容的には、「ソ連の政治状況については真の姿を伝え、父の政治的見解を正しく表している。」(マキシム・ショスタコーヴィッチ)との評価が正当と考えられている。粛清(殺害)におびえながら二重人格的に体制を賛美する作品と内面を深く掘り下げる作品の両者を作曲続けた彼の苦悩は、現代の私たちが聴いても苦しくなるほどである。サッカーが好きで、審判員の資格を持っていたという面白いエピソードがあることも記述しておこう。

 

■主な作曲分野

 交響曲15曲、弦楽四重奏曲15曲、オペラ6本、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲がそれぞれ2曲。その他バレエ、声楽曲などにも多くの名作がある。個人的な苦悩が作品に昇華され普遍化されている点も含め、現代のベートーヴェンとも言える大作曲家だ。

 

簡単な分析


  後期ロマン派以降を代表するシンフォニストとして、マーラーと一騎討ちとなった。「とても好き」の数ではマーラーに水をあけられたが、「比較的好き」を合わせた割合は6割を超え、わずか8ポイント差でショスタコーヴィッチに軍配が上がった。マーラーの場合、多くの作品が頻繁にアマオケのプログラムに載るようになっているのに対して、ショスタコーヴィッチの交響曲はいまだ5番だけが突出して取り上げられている。演奏の困難さ考えれば、5番以外の交響曲が取り上げられるようになるのはちょっと難しいかもしれない。今回の結果は、アマオケにも弾きやすい5番の評価がそのままショスタコーヴィッチの評価に反映したものである。

 楽器別に見ると、木管楽器からの評価が低く、弦楽器と金管楽器からの評価が高いことが分かる。中でも、ヴィオラからの「好き」の回答は7割を超えており、とても印象的な結果だ。もちろん金管楽器からの評価は抜群で、すべてのパートで7割を超える支持を集めている。特にチューバからの評価は9割近い数値となっている。

 

 ショスタコーヴィッチの音楽は、若年から中堅までの層からは6割を超える支持を受けているが、60歳以上の高齢層からの支持は半数に欠けている。この傾向は、あらかじめ予想されたとおりで、このアンケート調査が、インターネットでなく、紙ベースでの調査で、回答者の年齢比率が異なっていたら、結果は相当に違うものになっただろう。

 

作曲家難易度:★★★★(難しい)


 ショスタコーヴィッチの難易度は7.8と全体平均の7.3ポイントより、0.5ポイント高い結果となった。当然に「難しい」のだが、実際の難易度に比べるとこの難易度は低く出ていると思う。5番以外のショスタコーヴィッチの交響曲を演奏したことのある方は、「こんなものじゃないよ」と言いたくなるだろう。実際、この評価は演奏もしやしく、聴きやすい5番の評価そのものである。そこを割り引いて考えないと痛い目にあうので、ご承知おきいただきたい。とは言え、ヴィオラの9.5ポイント、フルート、クラリネットなどの9.0ポイントは相当に難しいことを意味している。

 一方、コントラバスは5.0ポイントとなっている。回答者全員が「普通」と回答したためだが、5番のコントラバスパートは、とても弾きやすくおいしいパートなのだが、それでも、この結果は相当の強者による回答によるものと割り引いて捉えた方がいいだろう。総合的に見て、ショスタコーヴィッチ(の交響曲第5番)は、アマチュア奏者にとって演奏するのが「難しい作曲家(作品)」と評価される。