第1位 :チャイコフスキー 交響曲第5番


バランスのとれた構成と華麗なオーケストレーション、そして、悩ましいほどに甘美な旋律に溢れるなど、この作品は、後期の交響曲の中でも、最も親しみやすく、コンサートでも取り上げられる頻度の高い作品である。

憂鬱で情熱的な第1楽章、特に第2楽章では、冒頭から夢見るような甘いメロディがホルンによって奏され、次第にゴージャスな響きを増していくところは、同じ時期に作曲されたバレエ《眠りの森の美女》を彷彿とさせられる見事さだ。第3楽章には、慣例のスケルツォではなく軽やかなワルツを置いたところもチャイコフスキーならでは。荒々しくも輝かしい第4楽章、すべての楽章が魅力的だ。

初演当時は、批評家からは不評で、チャイコフスキー自身も「こしらえ物の不誠実さがある」と考えていたが、ハンブルクでのリハーサルの際、オーケストラ楽団員から大変好評で、演奏会も大成功したことから、本人も成功作と評価するようになった。

 

アンケート結果


アンケートの全回答者中、本作品に「最も好きな作品」62名、「二番目に好きな作品」57名、「三番目に好きな作品」31名が投票し、選好度ポイント計算※の結果、全体の第1位となる512ポイントを獲得。第2位となったブラームスの交響曲第1番の300ポイントを大きく引き離し圧勝だった。

 

(注)選好度ポイント=「最も好きな作品」回答数*5点+「二番目に好きな作品」回答数*3点+「三番目に好きな作品」回答数*1点

楽器別評価


  楽器別に見ると、全13分野中、ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバス、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ、打楽器の9分野で第1位を獲得した。圧倒的な高い評価だった。

弦楽器群は一般的にドイツ物好きなのかなと勝手に思っていたが、モーツァルトを尊敬していたチャイコフスキーの洗練された一面を考えれば、弦楽器群からの高い評価もうなずけないものではないだろう。

一方、ファゴットを除く木管楽器部門では、フルート第4位、オーボエ第5位、クラリネット第8位と意外なほど振るわなかった。特に、冒頭のメロディに始まり活躍箇所が多いクラリネットから支持が集まらなかったのは意外。もちろん金管楽器からの評価は抜群で、特に第2楽章の冒頭でクラシック音楽史上最も甘美と評される素晴らしいメロディを担当するホルンパートから第1位の支持を得たのは、妥当な結果なのだろう。

年齢別評価


 

20歳未満から39歳までの層では第1位、ベテラン世代の40歳~60歳未満でも第2位と幅広い年齢層からの支持を集めている。60歳以上では19位とほとんど評価されていない状況。こうした評価は、この作品が持つどこか若々しい響きとも関係しているのかもしれない。

 

 

演奏難易度:★★★(平均的)


チャイコフスキーの交響曲第5番の作品難易度は7.3ポイントと全作品平均難易度7.3と同数値でちょうど平均的な難易度の作品と言える。楽器別に見ると、ファゴットが9.1ポイント、トランペットが8.5ポイント、打楽器が8.1ポイント、ホルンが8.0と4つのパートで「とても難しいレベル(8.0ポイント以上)」と評価されている。一方、ヴィオラ5.1ポイント、コントラバス6.0ポイント、チューバ6.0、オーボエ6.3の4つのパートで「比較的やさしい(6.6ポイント以下)」と評価されている。

総合的に見て、チャイコフスキーの交響曲第5番は、「アマチュアオーケストラにとって演奏しやすい作品」と評価できる。

 

(注)難易度ポイント=(「とても難しい」回答数*10点+「難しい」回答数*8点+「普通」回答数*5点+「比較的やさしい」回答数*3点+「やさしい」回答数*1点)÷回答総数

総合評価


 

以上の結果からアマチュアオーケストラ奏者のこの作品に対する評価は以下のような傾向があると推測される。

楽器区分

難易度

選好度

総論(全体として以下のような傾向がある)

ヴァイオリン

7.3

1

演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き

ヴィオラ

5.1

1

演奏は易しく、この作品がとても好き

チェロ

7.3

2

演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き

コントラバス

6.0

1

演奏は易しく、この作品がとても好き

フルート

7.8

5

演奏は難しいが、この作品が好き

オーボエ

6.3

2

演奏は易しく、この作品がとても好き

クラリネット

7.3

7

演奏は特別難しくなく、この作品が好き

ファゴット

9.1

1

演奏はとても難しいが、この作品がとても好き

ホルン

8.0

1

演奏はとても難しいが、この作品がとても好き

トランペット

8.5

1

演奏はとても難しいが、この作品がとても好き

トロンボーン

7.4

1

演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き

チューバ

6.0

1

演奏は易しく、この作品がとても好き

打楽器

8.1

1

演奏はとても難しいが、この作品がとても好き

総合

7.3

1

演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き

 

  • 8.0≦作品難易度:演奏はとても難しい 
  • 7.6≦作品難易度≦7.9:演奏は難しい
  • 7.1≦作品難易度≦7.5:演奏は特別難しくない
  • 6.7≦作品難易度≦7.0:演奏は比較的易しい
  • 作品難易度≦6.6:演奏は易しい

※選好順位の評価

  • 1位~3位:この作品がとても好き
  • 4位~6位:この作品が好き、7位~10位:この作品がまあまあ好き
  • 11位~:この作品が特別好きではない 

アマオケ奏者の声


  •  全楽章を通して素敵なメロディがある(20歳~39歳・女性・ヴァイオリン)
  • チャイコフスキーは何と言ってもメロディの美しさが際立っています。そして4楽章の壮大さが大好きです。個人的には、2nd  Vnにも、1st Vnの1オクターブしたでのメロディが与えられているのがうれしいです。(40歳~59歳・女性・ヴァイオリン)
  • 表現が直球で熱い。(20歳~39歳・男性・ヴァイオリン)
  • 2楽章の優美な旋律が好き。また、4楽章のコーダで今までの苦悩から解放されたという感じが好き。(20歳~39歳・男性・ヴァイオリン)
  • 運命のテーマが良いです。(20歳~39歳・男性・ヴァイオリン)
  • 印象的な旋律、口で歌いやすい。(20歳~39歳・男性・ヴィオラ)
  • ド迫力、情熱、大団円。(20歳~39歳・男性・チェロ)
  • 運命の主題の変化が楽しい。(20歳~39歳・男性・チェロ)
  • 第1楽章のチャイコフスキーらしいほの暗さ、転じて第4楽章の華やかさ。
  • (20歳~39歳・女性・コントラバス)
  • 自分が演奏するコントラバスパートよりも弦楽器全体とTpが輝く曲だと思う。(20歳~39歳・男性・コントラバス)
  • チャイコフスキーの思いが全楽章に出てきます。最初から最後まであのメロディが出てきて離れられません。チャイコフスキーの傑作です。(60歳以上・男性・コントラバス)
  • チャイコフスキーはフルートにとっては美味しくないとよく言われる。確かにソロなどは少ないのかもしれないが、チャイ5の1楽章は演奏していて鳥肌がたつほど素晴らしいと思う。(20歳~39歳・女性・フルート)
  • 3rd/picc.で乗ったが、役割がきちんとありとても楽しい。(20歳~39歳・女性・フルート)
  • 第2楽章が美しい(20歳~39歳・男性・オーボエ)
  • 最初の運命の動機のクラのアドゥエ、と2楽章のホルンが胸熱。オブリガートのクラも胸熱。チャイコありがとう。)(20歳~39歳・女性・クラリネット)
  • 生きる活力をもらえる力強さと繊細さが両方あるから。(20歳~39歳・女性・クラリネット)
  • ファゴットかなり難しいですがやりがいあります。(20歳~39歳・女性・ファゴット)
  • チャイコフスキーらしい印象にのこる旋律が好き。四楽章冒頭の響きがよい。ファゴットにとっては厳しいところが多いが美味しいところもすごく多い。(20歳~39歳・女性・ファゴット)
  • 2楽章ホルンソロ。ホルンを始めたときからいつかこのソロを吹きたいと考えていた。とてもロマンチック。(20歳~39歳・女性・ホルン)
  • 2楽章にソロがある。ホルンプレイヤーなら誰もが1度は吹いてみたいと思う曲であると思う。(20歳~39歳・女性・ホルン)
  • 知性と熱情が高い所で融合している完成度の高さ。一拍毎に変わる和声進行、その複雑さを感じさせない美しい旋律。理論と閃きが共存する稀有な作品。(40歳~59歳・男性・ホルン)
  • 華やかで好き。(20歳~39歳・女性・トランペット)
  • とにかくかっこいい。特に金管。メロディが良い。弦の厚みが良い。(20歳~39歳・男性・トランペット)
  • 自分の楽器(トランペット)を主体としてオーケストラ全体の音楽が構想されているように思える部分が多くあるところ(たくさん活躍できる)。(20歳~39歳・男性・トランペット)
  • チャイコフスキーはトロンボーン3本それぞれに役割をちゃんと与えてくれるので、どのパートになってもおいしい。旋律と伴奏どちらをとってもおいしい。(20歳~39歳・女性・トロンボーン)
  • 金管楽器の魅力が全面に出せる。(20歳~39歳・女性・トロンボーン)
  • 感情と構成が見事に合致した曲。燃えるけど崩れない!(40歳~59歳・男性・ティンパニ)
  • 気がついたら最終楽章を口ずさんでいる、そんな妙な中毒性に溢れた曲だと勝手に合点しています。ティンパニストとしては、いかにもチャイコらしい節回しもほんと大好き。(20歳~39歳・女性・ティンパニ)