第5位 ラフマニノフ

出身区分  ロシア/近現代
生年没年  1873(セミョノヴォ)-1927(ロサンジェルス)
学歴  モスクワ音楽院ピアノ科・作曲科
主な作品
  • 交響曲第2番ホ短調(4位)
  • ピアノ協奏曲第2番ハ短調
  • パガニーニの主題による狂詩曲

 

■作曲家への道のり

 作曲家存命中の評価は、彼は大ピアニストであって、決して大作曲家ではなかった。個人的にも、ロシアの大地を思い出す哀愁漂うメロディと豪華絢爛なオーケストレーションに惹かれるものの、あまりに通俗的に過ぎるとも感じていた。しかし、彼の伝説的な逸話の中で、その失敗によって彼が精神的なダメージを被る元となった交響曲第1番を演奏会で初めて聴いたとき、当初、ラフマニノフがどのような作曲家を目指していたのかが理解できた気がした。この作品は、チャイコフスキーの衣鉢を継ぎながらマーラーの交響曲を思わせる西ヨーロッパ的なモダンな作品で、まさに現代ロシアを代表する交響曲作家の登場を意味していたのである。彼が、この作品の失敗の後、復活(あるいは転向)を遂げたのが、幸いだったのか、不幸だったのか、これは永遠の謎である。

 

■得意楽器

 作曲家自身によるピアノコンクールを実施したら、果たして誰が1位を取るのだろうか。粋な表現ではモーツァルト、豪快なベートーヴェン、精細な表現ではショパン、目を見張るようなテクニックはリスト、重々しいブラームス、精密な表現はバルトーク、そして、ラフマニノフは、雄大で濃密な表現が特徴になるのではないか。現代のコンクールなら、リストとラフマニノフの一騎打ちになるのではないか。1910年、マーラー指揮するニューヨークフィルの演奏会でラフマニノフ自身のピアノソロで彼のピアノ協奏曲第3番が演奏されている。マーラーが「この曲は傑作だ」と言って長時間のリハーサルを強いたとの記録が残されている。聴いてみたかった。

 

■人間関係

 交響曲第1番の失敗で神経衰弱に陥っていたラフマニノフを救い、あの素晴らしいピアノ協奏曲第2番を作曲できた恩人は、催眠療法を駆使して治療したダーリ博士というのが有名なお話。最近の研究では、その治療に過大な評価を与えるのはどうかとされているようだが、復活を遂げたラフマニノフが、ダーリ博士にピアノ協奏曲第2番を献呈したことを見れば、彼がダーリ博士の治療に感謝していたことは確かなことだろう。作曲家との関係では、モスクワ音楽院で崇拝するチャイコフスキーから高く評価された。音楽院ではスクリャービンと同級生で、卒業の際、首席がラフマニノフで、第2位がスクリャービンだった。

 

■主な作曲分野

 交響曲は3曲、ピアノ協奏曲は4曲、そのほか、自らが得意としたピアノのための作品としては、《パガニーニの主題による狂詩曲》、ピアノソナタ、前奏曲集など多い。その他、オペラが3作、合唱交響曲《鐘》などの多岐にわたっている。

 

回答の傾向


かつて、好きな作曲家の順で、ラフマニノフが全体の5位に入るなんて考えられないことだった。これは、近年、ラフマニノフの音楽の再評価が進んでいる証拠だろう。

 

実際に演奏会のプログラムを見ても、従来から人気の高かったピアノ協奏曲第2番はもちろんのこと、近年ではピアノ協奏曲第3番、そして、今回の「交響曲編」の対象でもある交響曲第2番が取り上げられることが本当多くなっている。こうした状況を反映して、ラフマニノフを「好き」な人の割合は7割を超えている。ポイント数でも、ベートーヴェンに匹敵する1835ポイントと驚きの数値をたたき出した。

 

 

  楽器別に見ると、「好き」な人の割合がヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにおいて7割を超えている。これは意外な結果だろう。難しいパッセージで苦しめられるが、それをもっても余りあるほど雄大で甘いメロディをたっぷり歌える充実度が高いということだろう。木管楽器では、交響曲第2番やピアノ協奏曲での素晴らしいソロが印象的なクラリネットからの高評価に対して、ファゴットからの評価が低いことが目に付く。金管楽器では、トロンボーンの評価があまり高くないのが意外。以前、ラフマニノフの交響曲第2番の本番の日、トロンボーン奏者が「吹く箇所が少なくて、あまり面白くない」と語っていたことを思い出した。あんなに目立つのにね。

 

 

 ラフマニノフの交響曲第2番が、アマオケの定番になったのはマーラーブームが始まった前世紀後半以降だから、早くとも今世紀に入ってからだろう。そうした意味で、若い人により評価されている今回の評価はラフマニノフ評価との関連で理解できる。しかも、彼の音楽は、血沸き肉躍る若々しい気力と熱い情熱にあふれ、実際、演奏には体育会系とも言えるほど、とにかく体力を使う作品である。私も含めてだが、正直、年齢の高い方(失礼!)にはちょっときつい作曲家かもしれない。

作曲家難易度:★★★★★(とても難しい)


 今回、単体で評価の対象となったラフマニノフの交響曲第2番は、長大な中にオーケストラの醍醐味がしっかりつまった力作だが、ヴィルトゥオーゾのピアニストだったラフマニノフらしく、オーケストラにもしっかりした技術を要求している。詳しくは、作品編をご覧いただきたい。

 作曲家難易度は8.4と全体平均難易度をはるかに上回る難易度で、作曲家別の難易度ランクでは、マーラーに次いで二番目に難しいという評価となった。アマオケで頻繁に演奏される作品としては、最も技術が必要な部類であることがわかる。楽器別に見ても、ホルンとチューバを除き、すべてのパートで平均を大きく上回る難易度となっている。フルートなどは、回答者全員が「難しい」と回答した(したがって10ポイント)。

 いい曲なので、高校生オケや大学オケでもよく取り上げられるが、この作品を選曲するなら「心して選曲せよ!」と言いたい。マーラーと並ぶ最高難度である。