作品を聴いていて、どこか懐かしく感じられる作品というのがある。このブラームスの交響曲第2番もそうした作品の一つ。
20年という歳月をかけ「背後にベートーヴェンという巨人の足音を聞きながら」完成させた第1番の後、その呪縛から解き放たれ、あっという間に完成させた第2番は、ベートーヴェンの6番《田園》交響曲に比較されるようなのびやかで明るい性格を持つ作品となった。
調性はヴァイオリン協奏曲と同じニ長調。特に長大な第1楽章はソナタ形式で書かれており、作品の冒頭でホルンによって奏される第1主題が、複雑化する展開部を経て、再びホルンで戻ってくるところなど、「おかえり」と言いたくなるほど、ほんとうに懐かしく感じられる素晴らしい出来栄えだ。
北ドイツの冬の空を思わせるような第2楽章や素晴らしくエネルギッシュなフィナーレなど、リスナーにとっても魅力満載の作品。
アンケートの全回答者中、本作品に「最も好きな作品」25名、「二番目に好きな作品」20名、「三番目に好きな作品」18名が投票し、選好度ポイント計算の結果、全体の第9位となる203ポイントを獲得。上位に入った同じブラームスの1番、4番に比較すると、田園的でのびやかな美しさが人気。ベストテンに滑り込んだ。
(注)選好度ポイント=「最も好きな作品」回答数*5点+「二番目に好きな作品」回答数*3点+「三番目に好きな作品」回答数*1点
オーケストラの花とも言えるオーボエ奏者が最も好きな交響曲は、このブラームスの交響曲第2番である。随所に素晴らしいソロが散りばめられており、納得の順位だ。第1楽章の冒頭から、後半の長いソロなどが目立つホルン奏者からも4位と高い評価を得ている。弦楽器では、ヴァイオリンからの評価は高いが、ヴィオラやコントラバスからはあまり評価されていない。トランペット奏者からの評価が低いのは、「難しい」からだろう。
この作品に対する評価は不思議とドヴォルザークの交響曲第8番とまったく同じようなV字カーブを描いた。10歳代の若いアマオケ奏者からは高い評価を得ているが、オケの中核世代である40歳代から50歳代の奏者の支持がほとんど得られていない。
両交響曲に共通する田園的でみずみずしい感性とこの傾向に何か関係があるのか。こうした特徴が若者と高齢者に訴えているのか。不思議な傾向である。
ブラームスの交響曲第2番の作品難易度は7.5ポイントと全作品平均難易度7.3より0.2ポイント高く、平均的な難易度の作品と言える。
楽器別に見ると、トランペット(10.0ポイント)は全員が「とても難しい」と回答したのをはじめ、ホルン(8.1ポイント)、トロンボーン(8.0ポイント)、チューバ(8.0ポイント)と金管楽器すべてのパートで「とても難しい(8.0ポイント以上)」と評価されている。
一方、ヴィオラ(6.0ポイント)、コントラバス(6.0ポイント)、フルート(6.5ポイント)の4つのパートで「やさしい(6.6ポイント以下)」と評価されている。
総合的に見て、ブラームスの交響曲第2番は、金管楽器にとって、とても難しく、それ以外のパートにとって比較的演奏しやすい作品と評価されている。
(注)難易度ポイント=(「とても難しい」回答数*10点+「難しい」回答数*8点+「普通」回答数*5点+「比較的やさしい」回答数*3点+「やさしい」回答数*1点)÷回答総数