この作品は、自他ともに認めるチャイコフスキーの最高傑作である。この作品が初演された直後にチャイコフスキーはコレラで亡くなってしまう。こうしたことから、毒殺説、自殺説などが語られている。こうした話が真実性を帯びるのは、やはりこの作品が尋常でないほど深刻だということだろう。
壮大な悲劇を見ているような第1楽章に始まり、揺れ動く心情を描くような第2楽章、威圧的とも言える歓喜の音響の渦となる第3楽章。そして、フィナーレでは、切々と哀悼の歌が高揚し激烈に音楽が爆発した後、次第に力を失い、バスドラムの一撃とともに鳴らされるトロンボーンの嘆きのコラールの後、救いのない闇の中に沈んでいってしまう。これほど深刻な音楽は、その後、マーラーが登場するまでは一切なかったと言って過言ではない。深刻であると同時に、彼の憧れに満ちた抒情的なメロディの美しさも際立っている。聴くものの心を大いに揺さぶる素晴らしい作品だ。
アンケートの全回答者中、本作品に「最も好きな作品」26名、「二番目に好きな作品」25名、「三番目に好きな作品」21名が投票し、選好度ポイント計算の結果、全体の第8位となる226ポイントを獲得。内容の深刻さもあり、同じ作曲者による華麗な5番に後れをとったが、さすが名作の誉れ高い作品だけに8位に入賞した。
(注)選好度ポイント=「最も好きな作品」回答数*5点+「二番目に好きな作品」回答数*3点+「三番目に好きな作品」回答数*1点
この作品の最大の特徴は、ヴィオラからの高い評価だろう。4位という順位もさることながら、投票者が二倍以上多いヴァイオリンと同数の得票を得たということは相当の高い評価だ。確かに、第1楽章の序奏から提示部までの間、ヴィオラの最大の見せ場があるなど、随所にヴィオラの暗い音色が効果的に使われている。金管楽器では、フィナーレで死の告知のようなコラールを聴かせるトロンボーンからの評価が高い。第1楽章や第3楽章での活躍を考えるとこの評価はよく理解できる。
このグラフを見ているとこの作品の絶望的な暗さと圧倒的な力感の表出が、各世代からどのように感じられているのか興味がある。20歳代~39歳代では5位と心身ともに充実した世代からの評価が高い。一方で、若い世代と年配の両端の世代からの評価が低い。
チャイコフスキーの交響曲第6番の作品難易度は7.9ポイントと全作品平均難易度7.3に比較して+0.6と「難しい」難易度と評価された。
楽器別に見ると、トロンボーン(9.4ポイント)ファゴット(9.0ポイント)、オーボエ(8.0ポイント)、トランペット(8.0ポイント)の5つのパートで「とても難しい(8.0ポイント以上)」と評価されている。一方、フルート(5.8ポイント)では「とても易しい(6.6ポイント以下)」と評価されている。
総合的に見て、チャイコフスキーの交響曲第6番は、「アマチュアオーケストラにとって演奏が難しい作品」と評価できる。
(注)難易度ポイント=(「とても難しい」回答数*10点+「難しい」回答数*8点+「普通」回答数*5点+「比較的やさしい」回答数*3点+「やさしい」回答数*1点)÷回答総数