出身区分 | オーストリア/後期ロマン派 |
生年没年 | 1860(イーグラウ)-1911(ウィーン) |
学歴 | ウィーン楽友協会音楽院 |
主な作品 |
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■作曲家への道のり
オーストリア帝国ボヘミア地域で、ユダヤ人のプチ・ブルジュアの家庭に生まれ、幼少の頃から音楽的な才能を示した。ウィーン音楽院では主に作曲を学び、当時、ウィーン大学で教えていたブルックナーの和声法の授業を受講している。
その後、指揮者として活動を始め、彼の振るドン・ジョバンニの上演を見たブラームスから激賞されるなど、指揮者としての名声が高まっていく。その間、ブタペスト王立歌劇場の指揮者となった1888年には交響曲第1番の第1稿を発表するなど、作曲活動も精力的に行っていた。
結局、彼の指揮者としての名声は頂点までに達し、作曲活動は余暇活動として、主に夏休み中に行われたのは有名な話。
■得意な楽器
彼の得意楽器は、ずばり「オーケストラ」だ。彼は、作曲家である前に当節を代表する大指揮者であった。ハンガリーやハンブルクの歌劇場の指揮者を経て、伝統あるウィーン宮廷歌劇場の音楽総監督になるのが1900年、彼が40歳のとき。同時にウィーンフィルハーモニーの指揮者にも就任し、それから10年間にわたり、指揮者として栄光の絶頂を極めることになる。
彼の交響曲をライブで聴いていると、そのオーケストレーションの素晴らしさ、かっこよさに本当に惚れ惚れする。私は、プレーヤーとしては、1番と2番を演奏した経験がある。初期作品ではあるが、各パートが実に合理的に書かれていて、弾きやすくて鳴りやすい。「楽器のことをよく分かっているなぁ」と感じた次第。もともと備わったセンスに加えて、指揮者としての経験が大きいのは言うまでもないだろう。
■人間関係
彼は、自らのことを三重の意味で故郷がないと言っていた。オーストリアではボヘミア人と言われ、ドイツではオーストリア人と言われ、世界ではユダヤ人と言われると発言している。また、ウィーン社交界随一の才媛と絶賛されていたアルマを妻に迎えるが、子どもの死去や彼女の不倫など、その後の彼は不安に苛まれることになる。
喪失感と不安が入り交じった、いわば『世界苦』が彼の作品の根底に流れていることは広く知られている。晩年の作品、交響曲『大地の歌』の中で歌われる『Dunkel ist das Leben, ist der Tod. /生きることは暗く、死もまた暗い』という歌詞に、私たちが強い共感を覚えるのは、現代の私たちが「不安の時代」に生きているからかもしれない。
■主な作曲分野
一部の例外はあるが、彼は、交響曲とリートの作曲家と言って過言ではないだろう。特に、未完を含めた10つの交響曲において、個人的な苦悩が、人類共通の『世界苦』にまで昇華され表現されているのが本当にすごいと思う。のたうち回るような激烈な表現から、天国的な平安の希求、そして、押し寄せるような愛情の波。
かつて、調和のとれた古典的様式を基本に書かれた交響曲が、ベートーヴェンによって理念の表現形式として変容して以降、これほどまでに理念やメッセージを直接的にこの形式に託した作曲家はいなかった。ロマン主義を体現する作曲家である。
「私の時代が来る」マーラーはそう予言していたそうだが、1980年代以降、マーラーブームが世界的にやってきて以降、マーラー人気は衰えをしらない。当時、世界の一流オーケストラが1番や5番を来日公演で取り上げ始め、その後、国内オーケストラもレパートリーとして定期演奏会で普通に取り上げるようになった。
さらにアマオケが頻繁に1番を演奏するようになったが、現在では、大学オケや大学OBオケを中心に5番や6番などの超難曲も演奏会で取り上げるようになっている。
今回のマーラーのベスト10入りは、まさに「私の時代が来た」ことの証左だろう。
楽器別に見ると、弦楽器からの評価が低調な中、コントラバス奏者から7割を超える支持を得ている。マーラーは基本的に「複音楽」の作曲家なので、低音域で充実した対旋律が散りばめられていることが評価の理由だろう。もちろん、金管楽器からの評価は高く、中でもチューバ奏者からは100%近い支持を得ている。木管楽器は全体的に高評価だが、フルート奏者だけは22位とマーラーがあまり好きでないようだ。
マーラーは、若い人に人気なのかなと思っていたら、高齢者ほど評価が高い!
「とても好き」の割合で言うと、10歳~19歳が25.9%、20歳~39歳が36.7%、40歳~59歳が51.5%、60歳以上が69.2%となっている。マーラーを弾きこめるのは相当な強者と思うが、今回の60歳以上の回答者は経験が豊富なだけではなく、演奏水準の高い大学オケやアマオケの出身者が多いのかもしれない。もしかすると、マーラーブームが始まった頃を知っているベテラン奏者は、マーラーに対する思いが若者よりも強いのかもしれない。いずれにしても、不思議な傾向だ。
作曲家難易度が8.5となったマーラーは、今回対象とした作曲家中で最も演奏が難しい作曲家との評価となった。
楽器別に見ても、すべての分野で平均を大きく上回る難易度となっており、どの楽器でもマーラーを演奏するにはそれなりの覚悟が必要であることが分かる。特に、あたかもオペラの主役のように歌い、嘆き、そして、祈る、それまでの楽器使用法とは全く異なる役割を担うことになったトランペットの負担は相当のものだろう。ほぼ全回答者から「とても難しい」との回答を得た。
マーラーは、すべてのアマチュア奏者にとって、演奏するのが「最も難しい作曲家」と分類できる。