構想から完成まで21年を要し、指揮者のH.V.ビューローから「ベートーヴェンの交響曲第10番」と評されたことは、音楽史に残る有名な逸話。ドイツ音楽の王道を行く交響曲で、運命の重圧を感じさせるティンパニの連打に始まり、金管楽器による歓喜のコラールで幕を閉じるドラマティックな構成が「苦悩から歓喜」をモットーとするベートーヴェンの後継者を強く印象づける。力強い両端楽章の充実ぶりに加え、中間楽章では、優美さや軽やかさも表現されており、ブラームスの隙のない作曲技法の見事さに舌を巻く思いがする。
第2楽章の優美なヴァイオリンソロ、第4楽章の雄大なホルンのソロはもちろん、各楽器の特性を活かしたオーケストレーションは見事。なお、第4楽章の第1主題が、ベートーヴェンの第9交響曲の第4楽章の歓喜の主題にうり二つであることは、初演時から話題となっていた。弾いていても聴いていても楽しめる充実した名作だ
アンケートの全回答者中、本作品に「最も好きな作品」36名、「二番目に好きな作品」31名、「三番目に好きな作品」27名が投票し、ポイント計算の結果、全体の第2位となる300ポイントを獲得。第3位となった同じブラームスの交響曲第4番には1位票では遅れをとったが、楽器別にまんべんなく得票し、ドイツ系交響曲の頂点として堂々の第2位を確保した。
(注)選好度ポイント=「最も好きな作品」回答数*5点+「二番目に好きな作品」回答数*3点+「三番目に好きな作品」回答数*1点
楽器別には、第2楽章のコンサートマスターによる優美なソロが印象的なヴァイオリンからの評価は3位だが、多くは「最も好きな作品」票に集まっており、1位票だけならチャイコフスキーの5番を上回っている。そのほかでは、ファゴットや打楽器では2位となっており評価が高い。
一方、第4楽章に素晴らしく雄大なソロがあるホルンやフルート、各所で活躍が目立つクラリネットでは評価は意外なほど順位が伸びなかった。
まさにパワーに満ちたこの作品に対して、心身ともに充実した20歳から39歳から高評価を受けたのは、ある意味当然か。その後、40歳以上では7位と若干評価が下がるが、全体的には中堅層から高齢層まで高く評価されている。
この作品は、ブラームスの作品の中では、どちらかと言うと若々しい力強さを感じるが、年齢層別の嗜好を見ると、すでに初期の作品から老成している印象のあるブラームスらしいと言えるかもしれない。
ブラームスの交響曲第1番の作品難易度は7.3ポイントと全作品平均難易度7.3と同数値でちょうど平均的な難易度の作品と言える。楽器別に見ると、ファゴットが9.3ポイント、トロンボーンが8.0ポイント、打楽器が8.0ポイントの3つのパートで「とても難しいレベル(8.0ポイント以上)」と評価されている。
一方、クラリネット5.8ポイント、ヴィオラ6.1ポイントの2つのパートで「比較的やさしい(6.6ポイント以下)」と評価されている。
総合的に見て、ブラームスの交響曲第1番は、「アマチュアオーケストラにとって演奏しやすい作品」と評価できる。
(注)難易度ポイント=(「とても難しい」回答数*10点+「難しい」回答数*8点+「普通」回答数*5点+「比較的やさしい」回答数*3点+「やさしい」回答数*1点)÷回答総数
楽器区分 |
難易度 |
選好度 |
総論(全体として以下のような傾向がある) |
ヴァイオリン |
7.3 |
3位 |
演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き |
ヴィオラ |
6.1 |
3位 |
演奏はやさしく、この作品がとても好き |
チェロ |
7.1 |
5位 |
演奏は特別難しくなく、この作品が好き |
コントラバス |
7.1 |
4位 |
演奏は特別難しくなく、この作品が好き |
フルート |
7.8 |
8位 |
演奏は難しいが、この作品がまあまあ好き |
オーボエ |
7.3 |
3位 |
演奏が特別難しくなく、この作品がとても好き |
クラリネット |
5.8 |
6位 |
演奏は易しく、作品が好き |
ファゴット |
9.3 |
2位 |
演奏はとても難しいが、この作品がとても好き |
ホルン |
7.1 |
5位 |
演奏は特別難しくなく、この作品が好き |
トランペット |
7.4 |
9位 |
演奏は特別難しくなく、この作品がまあまあ好き |
トロンボーン |
8.0 |
8位 |
演奏はとても難しいが、この作品がまあまあ好き |
チューバ |
|
― |
― |
打楽器 |
8.0 |
2位 |
演奏はとても難しいが、この作品がとても好き |
総合 |
7.3 |
2位 |
演奏は特別難しくなく、この作品がとても好き |