素朴なボヘミアの野人とも言うべきドヴォルザークが、新大陸にして、急速に発展していた大都会ニューヨークに音楽学校の校長先生として赴任したのは、音楽史上に残る素晴らしい結果を残すことになった。そこで生まれたのは、この名作交響曲のほか、しっとりとした味わいのある弦楽四重奏曲《アメリカ》、そして、当該分野の最高傑作と言われるチェロ協奏曲の3作品が生まれたのである。
この作品には、黒人霊歌や新しいアメリカの音楽様式からの影響、そして、アメリカの活気、さらに何よりも、根っからの田舎人だったドヴォルザークのボヘミアへの望郷の念が織り込まれている。どの楽章にも稀代のメロディメーカーだったドヴォルザークの旋律線の魅力がたっぷりだが、なんといっても、懐かしく故郷や愛する人を思い出すような第2楽章の魅力がずば抜けている。豪壮な第4楽章では、冒頭から、鉄道マニアだったドヴォルザークの逸話を思い出すようなアメリカの機関車を描いたような響きが面白い。
アンケートの全回答者中、本作品に「最も好きな作品」21名、「二番目に好きな作品」31名、「三番目に好きな作品」36名が投票し、選好度ポイント計算の結果、全体の第6位となる234ポイントを獲得。広く親しまれたこの名作が、堂々の第6位に入った。
(注)選好度ポイント=「最も好きな作品」回答数*5点+「二番目に好きな作品」回答数*3点+「三番目に好きな作品」回答数*1点
楽器別の評価で目立つのは、トランペットパートからの2位という高評価だ。この作品の第4楽章の冒頭、金管群ので中から際だって来るトランペットの壮麗な響きは、誰もが「かっこいい」と思うクラシック界を代表する名旋律だろう。金管楽器では、同様にトロンボーンから5位と高評価である。一方、第2楽章の両端だけしか吹かせてもらえないチューバからは最低の評価がなされているのは当然。そのほか、木管楽器ではソロでも大活躍のファゴットで4位、第2楽章のフルートとのユニゾンによる長い歌が美しいオーボエは7位となっている。弦楽器ではチェロの6位が最高。
以下のグラフを見て、新世界交響曲は、やはり若い人に愛されている作品なのだなと改めて感じた。筆者がアマオケに参加した若い頃も、この作品を演奏するときは本当にワクワクしたものだ。今でもいい演奏を聴くとさすが名曲だなとは思うが。
20歳未満では、チャイコフスキーの5番に続き堂々の第2位に評価された。その後、年齢の推移と共に評価は低くなってしまう。
ドヴォルザークの交響曲第9番の作品難易度は5.7ポイントと全作品平均難易度7.3に比較して▲1.6ポイントと同じドヴォルザークの交響曲第8番に次いで「やさしい」難易度と評価された。
楽器別に見ると、フルート(8.0ポイント)は、オーボエとの長いユニゾンやセカンドパートのソロがあることからか「とても難しい(8.0ポイント以上)」と評価している。それ以外のパートでは、中間的な評価のコントラバスを除くすべてのパートで「とてもやさしい(6.6ポイント以下)」と評価されている。
ドヴォルザークの交響曲第9番は、「最もアマチュアオーケストラ向きの作品」と言うことができる。
(注)難易度ポイント=(「とても難しい」回答数*10点+「難しい」回答数*8点+「普通」回答数*5点+「比較的やさしい」回答数*3点+「やさしい」回答数*1点)÷回答総数